沼田祇園祭からみえた地域愛と地理学の力(8/3)

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8月3日に沼田市の中心部に鎮座し、江戸初期からの歴史を持つ須賀神社の沼田祇園祭に参加してきました。はじめての参加にも関わらず、お神輿を担がせていただき地域の方々から認めていただいたのだと、とてもうれしく思いました。しかも衆議院議員の中曽根康隆さんと並んで、先発、先頭で、両翼に担わせていただきました(誠に恐れ多いこと)。中曽根さんは、私よりも二学年上のほとんど同世代で、親近感が沸きます。中曽根さんのほかにも、衆議院議員の尾身朝子さんや市長の星野さん、県議会議長の金井さんなど、錚々たる方々がお越しになっており、このお祭りの重要性を認識させられます。

さて、神輿を担ぎながら、また神輿を担ぐ男性たちの様子をみながら、さらには地域の代表者たちとの会話から、様々な気づきを得ることができました。その中でも、お祭りの地域にとっての意義を考えました。

【教育機能】祭りには子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の人々が関わります。その中で年長者から祭りのこと、地域の歴史・文化、様々な情報が後世に伝えられます。また、年長者が礼儀などについても教えます。さらには、それぞれの得手不得手、好き嫌いに合わせ、様々な役割が与えられる、もしくは見つけだすことができます。こうした教育の(現代における)良し悪しは別にして、自然と役割が付与され、自らの社会的役割を認識する機能をお祭りは持っています。

【パワーのはけ口】担ぎ手は「おっらーおっらー」などと気勢を上げて神輿を担ぎます(オラオラ系とはここからきている?)。また神輿が上下左右に揺れます。様々なパフォーマンスをします。信号などお構いなしに担ぎます。これは「暴走族と同じだ!」と感じました。異なるのは、社会一般に許容されるかどうかです。神輿の巡行はむしろ周囲に元気を与え、邪気を払い喜ばれます。普段は騒ぐことが許されなくても、祭りは人が持つパワーを全開に発散でき、かつ人から喜ばれる、誰も損をしない場なのです。

【地域の誇り(愛)を育み・発信する】おそらく、今回、地域の方から祭りへの参加をお誘いいただいたのも、私を受け入れたというよりも、私に地域の誇りを示したいからでは?と思いました。地域愛には内に向いたものと、外に向けられるものがあります。内に向いたものというのは、故郷を思う気持ち、そこに暮らす仲間たちを思う心です。一方で、外に向けられた地域の誇り/愛とは、外の人間に対して、自分たちの地域や人々を自慢したいと思う心です。自分が住んでいる地域や出身地を褒められて嫌な気持ちになる人はほとんどいません。それは個人でも同じです。自分を評価してくれる人、褒めてくれる人を嫌いにはなりませんよね。私だって、住んでいる宇都宮や生まれ育った札幌を愛していますし、良いところを自慢したいです。逆に地域をけなされると、残念な気持ち、悲しい気持ちになります。このことからも、地域と人は一体であることに気が付かされます。人も植物と同じように、地域に根を生やしているのですね。地域から養分(学び)を得て成長します。地理学を学ぶ人間として、「地域の人たちの心を受け止める力」というがとても大切であることに気が付きます。

今回は私の都合で神事のみの参加となってしまいました。帰り際、長老たちにお礼を言って回っていると、皆、「え!もう帰っちゃうの」と残念そうな顔をされていました。神事は3日の午前で終わりですが、そのあとは地域の人たちの楽しみの時間が待っているからです。「もっと沼田の良いところを見て行ってよ~」ということなのでしょう。来年は必ず3日間すべて参加し、沼田の人々の誇りや自慢をたくさん感じたいと思います。

最後に、元沼田高校の校長だった林先生とお話したときに感じたことをお話します。どうして私が沼田に目を付けたのか?です。きっかけは、これまで沼田の方々にお話ししてきたように、熱心かつとても優秀な若手の市職員との出会いでした。しかし、それだけでは沼田に関わる理由にはなりません。林先生との会話のなかで、どうして私が沼田に関わろうと思ったのかに気が付かされました。それは沼田が地域の魅力を語る上での原石がたくさん転がっている、「本物」がたくさん残っているということです。これは私が地理学者であることを同時に気が付かせてくれました。つまり、地域全体でその地域の魅力を瞬時に捉える力が備わっているということです。手前味噌ではありますが、地域の本質を嗅ぎ分ける嗅覚のようなものが確実に自分に育っていることを実感できました。

地域からの気づき。地域からの学び。これが地理学を学ぶ人間にとって最も喜びを感じるところです。これからも沼田の方々の心に触れながら、地域の方々が真に望む未来を一緒に描いていければ、と感じた一日でした。

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この記事を書いた人 / 駒澤大学 文学部 地理学科 准教授

専門は都市地理学・地域研究。市街地開発やまちづくりを主題に、現場での調査を重ねる。「課題も解決策も、現場(地域)にある」を信条に、地域のお医者さんでありたいと考えている。